プロローグ

「モデルルームって、できあがった後しか見られないのが、なんかもったいないよね。」

そんな社内のひと言から、この記録を残すことにしました。
家づくりの現場には、完成だけでは伝わらない面白さや発見がたくさんあります。
特に、「SKELETON HOUSE」という住まいのかたちは、“暮らしを最高に面白くする仕掛け”が、まさに現場の途中にこそ詰まっていると感じたからです。

このコラムでは全7回にわたり、仙台茂庭ヴィレッジの販売を担当している堀金が、「SKELETON HOUSE」が完成するまでの様子をまとめてご紹介していきます。

 

 

 

SKELETON HOUSEとは。

 

 

まず、「SKELETON HOUSEって何?」という方も多いのではないでしょうか。
詳細は、企画・設計を手がけているエンジョイワークスさんのWebページをご覧いただくのが一番わかりやすいのですが、僕は、「自分の理想のライフスタイルを描くキャンバス」だと思っています。

僕は以前、設計事務所で住宅設計の仕事をしていました。 設計事務所が手がける家には「標準仕様」がなく、建物の形、大きさ、外壁の素材、床材や壁紙の色まで、あらゆる建材の中から完全に自由に選ぶことができます。

でも、その中でずっと感じていたのは、「自由な設計」と「住む人の負担」のバランスの難しさでした。
自由に選べるのは素晴らしい。でも、すべてを自分で決めるのは案外ハードルが高い。

その後、現在のユカリエに入社し、SKELETON HOUSEと出会いました。この住宅には、まさにそのバランス感覚の良さがありました。「ある程度はできている。でも、暮らしを完成させるのは住む人自身。」その考え方に深く共感したんです。

さらにSKELETON HOUSEを知っていくうちに、これはとても合理的な仕組みだとも感じました。
昨今の建築費の高騰を考えると、これからの住宅づくりでは“費用配分”が重要になります。
僕自身はそこに「メリハリ」が必要だと考えています。

つまり、家そのものの性能(雨風・暑さ寒さから守る部分)と、自分たちの理想の暮らしを描く部分
この2つのバランスをどう取るか。でも、初めて家づくりをする人にとっては、その両方が大事で、でも難しい。


SKELETON HOUSEでは、建物の“スケルトン”――つまり構造と外側の部分はあらかじめ決められている。だから施主は、“中身”=インフィル(内装)部分に自分たちの想像力を注げばいいんです。

そして、ライフステージが変わるごとに、自分たちの暮らしのかたちも自然に変わっていく。
そんな変化に、このスケルトンハウスはきっと柔軟に寄り添ってくれると思いました。

 

 

 

なぜ泉福岡なのか?

 

 

「SKELETON HOUSEをどこに建てるか?」と考えたとき、
真っ先に浮かんだのが、仙台市泉区福岡というエリアでした。

泉福岡は、泉ヶ岳のふもとに広がる静かな住宅地。
背後には山の稜線、眼下には広がる田畑。
市街地のように家と家が密集していないため、外と自然がつながる暮らしが、ごく自然に実現できます。

たとえば、仙台駅周辺や泉中央のような都市型の住宅地では、
便利さと引き換えに「窓を開けたらすぐ隣の家の壁」という景色になりがちです。
でも泉福岡には、自分の“暮らしの音”が周囲に自然と溶け込むような、心地よい距離感があります。

また「福岡」という地名にも、少し面白い背景があります。
その由来にはいくつか説があり、たとえば伊達家の家臣・福岡氏にちなんだという説や、
 「福が多く集まる岡(丘)」という意味が込められているという説もあります。

長いあいだこの地は、里山として人々の暮らしを支えてきました。
そこには懐かしさと新しさが同居する、どこか独特の空気が流れています。

いまこの土地では新たな宅地整備が進み、若い家族の移住も増えています。
でも、ただの開発ではなく、昔ながらの景色や人との関係もちゃんと残っている。
“新しい暮らしが静かに根を下ろせる場所”として、この土地には大きな可能性を感じました。

だからこそ、「暮らしを面白くする余白のある家=SKELETON HOUSE」を建てるには、
泉福岡はまさにちょうどいい舞台だと思えたのです。

 

完成後は、泊まれるモデルルームに

このモデルルームは、完成後、実際に“泊まれる空間”として運用していきます。
「見て終わり」ではなく、「過ごして感じる」モデルルームです。

住宅の見学は、たいてい昼間の明るい時間に数十分ほど。
でも本当の住み心地は、時間の流れや体の感覚を通してでないと、なかなか見えてきません。

たとえば――

・朝起きたとき、どんな光がベッドに差し込むか

 ・夜、照明を落とした空間がどれくらい落ち着くか

 ・冬の夕方、足元が冷えるかどうか

 ・窓を開けたときの風の抜け方や、外の音との距離感

 そんな“図面には書き込めない体感”を、実際にこの空間で味わっていただけたらと思っています。

そしてもうひとつ。
このモデルルームでは、「住まいは完成形ではなく、進行形である」ということも体験してもらえるはずです。

「ここに何を持ち込み、どう暮らすか」を、訪れた人自身が考え、想像する。
 “こんなふうに暮らしてみたい”という気持ちが膨らむ余白を、ぜひ体で感じてもらえたら嬉しいです。

 

 

 

■これからの記録について

この連載では、着工から完成まで、SKELETON HOUSEがどう育っていくのかを全7回でお届けしていきます。

“住まいの完成”ではなく、“暮らしのスタート地点”としての建築。
そのプロセスに込めた想いや、途中での迷い、試行錯誤も含めて、記録として残していきたいと思います。

 

 

 

次回|地面を掘って、暮らしの器をつくる