【第2回】地面を掘って、暮らしの器をつくる
――基礎工事の話
「現場が動き出したな」と実感する瞬間は、人によって違うかもしれません。
でも僕にとっては、ショベルカーが土を掘り始めたときがそのタイミングです。
図面の中にあった家の輪郭が、地面に線として描かれていく。
その瞬間に、ようやく「ここに本当に家が建つんだな」という実感が湧いてきます。

地縄(敷地に建物の外形をひもで示すもの)が張られていたとき、
「こんなに小さかったっけ?」と、毎回思います。
でも、土工事が進み、基礎の枠が組まれていくにつれて、空間のスケールが正確に伝わってくる。
不思議なもので、図面で“ちょうどいい広さ”に見えていた場所が、現場では狭く見えたり、広く見えたりする。
この「ギャップ」をどう受け止めるかも、家づくりの面白さの一つなのかもしれません。

■地味だけど超重要、基礎工事の流れ
建物の構造と暮らしを支える“土台”の工事について紹介します。
見た目に大きな変化があるわけではないけれど、家づくりの中で最も重要な工程のひとつです。
事前に実施した地盤調査での結果を踏まえて、改良工事を行い、“ベタ基礎”となっています。
地盤調査の結果、錘の自重のみで貫入する軟質な(緩い)部分が認められ、不同沈下等の沈下障害が生じる可能性が懸念されるとの判定。
そのため地盤改良が望ましいとされ、柱状地盤改良工法を採用して補強を行いました。
ベタ基礎は、建物全体をコンクリートの盤で支える構造。
不同沈下に強く、床下の湿気やシロアリ対策にも効果があるため、木造住宅ではよく使われる工法です。
基礎工事の大まかな流れは以下のとおりです:
掘削→砕石敷き→捨てコン→墨出し→配筋→配筋検査→型枠→コンクリート打設
・掘削
まずは地面を掘るところからスタート。
基礎の一部はしっかり地中に埋まる必要があるため、想像以上に大きな穴が空きます。
・砕石・捨てコン・墨出し
掘った地面に砕石を敷いて締め固め、 その上に“捨てコン”という薄いコンクリートを流して、基礎の位置を正確に出すための準備をします。
・配筋と検査
鉄筋を組み、強度を持たせる骨組みを作ります。 その後、見えなくなる前に第三者機関の検査で設計通りかチェックされます。
・型枠 → コンクリート打設
型枠を組んで、いよいよコンクリートを流し込みます。 天気や気温にも左右される重要な工程で、現場も自然と緊張感が漂います。

■“暮らし”の輪郭が見えてくる
基礎工事が終わると、次は給排水配管工事に入ります。
現場に赤・青・白・グレーの管が並び始めると、
「ここが洗面室で、ここがキッチンで…」と、生活の動線がリアルに浮かんできます。
※赤:給湯 青:給水 白:ガス グレー:排水
図面上では分かっていたことが、現場で形になった瞬間に、“生活のイメージ”に変わる。
そして基礎の上にぴょこぴょこと出ているのが、アンカーボルトです。
この後の建て方の前に、土台と基礎をこのアンカーボルトで接合していきます。
そして何より、丁寧にきれいに施工してくださった現場の皆さんに、心から感謝です。

■インフィルは変えられる。でも基礎は、変えられない
SKELETONHOUSEでは、“変えられるもの”と“変えられないもの”を分けて考えることを大切にしています。
内装(インフィル)は、住みながら変えていけるけれど、基礎や構造(スケルトン)はそうはいきません。
だからこそ、今の暮らしにも、未来の暮らしにも耐えられる土台を、きちんとつくることが大切です。
その意味で、今回の基礎工事は、目立たなくても絶対におろそかにできない工程でした。
コンクリートが流し込まれ、硬化を待っている時間。
見た目の変化はほとんどないけれど、じっとその“器”を眺めていると、
その上に重なる未来の暮らしの姿が、少しだけ見えてくる気がします。
この地面に、どんな暮らしが乗るのか。
それを想像しながら、今回のコラムを締めたいと思います。
次回|骨組みが立ち上がる日――構造と空間がつながる瞬間へ