【第3回】フレームが立ち上がった日、想像が輪郭を持ち始めた
――上棟の記録と、構造美の話

 

■空に向かって伸びるフレームの姿

 

 

4月5日と6日、泉福岡の現場で上棟作業が行われました。
前日まで何もなかった場所に、柱と梁が整然と組まれていく光景は、何度見ても胸を打たれます。木材の香り、金物のきらめき、空に向かってのびる垂直と水平のライン――建築が「形」になる、そんな瞬間でした。

この日は天気にも恵まれ、終日青空が広がる中での作業。
現場に設置していたタイムラプスカメラには、影が伸び、家のかたちが少しずつ浮かび上がっていく様子が記録されていました。
その映像を見返すと、現場に立っていたときの空気、音、そして気持ちが蘇ってきます。

 

 

■SKELETON HOUSEの構造的な工夫

 

 

SKELETON HOUSEでは、木造・金物工法を採用しています。
これは、従来の木造軸組工法に、接合部に専用の金物を用いることで、構造の安定性を高めたもの。耐震等級2(建築基準法の1.25倍)相当の性能を標準で確保しており、日常の安心を支える堅牢な構造です。

また、建物の平面形状をあえてシンプルな長方形に設計することで、耐震性のさらなる向上と、合理的な空間構成を実現。「美しさ」と「強さ」を両立する構造美は、SKELETON HOUSEの大きな魅力のひとつです。

さらにこの家は、1階に柱が1本、2階には柱がまったくないという非常に開放的な設計が可能です。 間口(5.46メートル)は共通ですが、奥行きは91センチピッチで自由に拡張できる仕組み。まるでレゴブロックのように、暮らしに合わせて長さを調整できる柔軟さがあります。

 

 

■骨組みから暮らしを想像する時間

SKELETON HOUSEの最大の特徴は、「外殻=スケルトン」と「内装=インフィル」を分けて考える点にあります。外壁や屋根、構造体といった“変えられない部分”をしっかり作り込み、内装や間取りといった“変えられる部分”には、住む人自身が手を加えられる余白を残しています。

構造体が立ち上がった今は、そのキャンバスに最初の線が引かれたような状態。
まだ床も壁もないからこそ、もっとも想像が広がる時間です。

柱のあいだに立って、窓の位置から見える風景を想像する。
「ここにダイニングを置いたら、どんな時間が流れるだろう」
「この梁に照明を吊るすと、夜はどんな雰囲気になるかな」
そんなふうに、“自分の暮らし”を考えながら、骨組みを見上げる時間が、なんとも楽しいのです。

そして何を隠そう、私はこの“フレームだけの姿”が、家づくりの過程の中でいちばん好きです。
想像が自由にふくらみ、未来の暮らしがまだ何色にも染まっていないこの時間に、建築の魅力が凝縮されているように感じます。

 

 

■見えなくなる構造、でもいちばん大事なもの

この2日間の作業を支えてくださった大工さんたちの丁寧な仕事には、心から感謝しています。
限られた時間の中で、正確に、かつ無駄のない動きで組み上げていくその姿は、まさに職人技。
骨組みを「組む」のではなく、「立ち上げる」という言葉のほうがしっくりくる――そんな感覚でした。

完成すれば、いずれ壁に隠れてしまうこの“骨格”こそが、暮らしを支える土台。 だからこそ今は、構造の力強さと、美しさをしっかりと見つめておきたいと思います。

これからこのフレームの上に、どんな時間と物語が重なっていくのか、今後も非常に楽しみです。

 

 

次回予告|見えなくなるところこそ、大切にしたい