【第4回】断熱と配線、見えなくなるけど大事なところ
― 見えない場所に、暮らしの心地よさが宿る ―

「スケルトンハウスって、壁や天井を現し(あらわし)で仕上げるんですよね?」
打ち合わせなどでそう聞かれることがよくあります。たしかに、スケルトンハウスは構造材の美しさや素材感を活かしたデザインが大きな特徴です。でも実は、それでも「見えなくなるところ」がしっかりと存在していて、むしろ見えないからこそ大事な部分があるのだと、今回の工程を経て改めて実感しました。
そして、それらがまさに、スケルトンハウスで過ごす日々の心地よさの土台をつくってくれているのです。
今回は、そんな 見えないけれど暮らしを支える工事の様子を少しご紹介したいと思います。
■断熱の施工とその狙い
スケルトンハウスの断熱仕様は、内部の構造や仕上げをスケルトン状態で楽しめるように外断熱が基本とされています。使用される断熱材は、フェノールフォーム系断熱材「ネオマフォーム」。断熱性能が非常に高く、さらに耐火性にも優れているため、最近では高性能住宅や外断熱の現場で選ばれることが多い素材です。
僕がスケルトンハウスの仕組みを気に入っている理由のひとつが、断熱レベルを柔軟に選べることにあります。今回のショールームでも外断熱だけでZEH基準(※)相当の性能が確保されていますが、さらに高い断熱性能を望む方は後から充填断熱を追加して強化することも可能です。
暮らし方の変化に合わせて断熱性能を調整できるというのは、とても合理的な発想だと思います。たとえば、住み始めのときは外断熱のみ、子どもが生まれたタイミングや将来のライフステージの変化に合わせて、より暖かさや快適さを求めた時に充填断熱を追加する、そんな選択肢も取れる。
これもまた「完成形ではなく、進行形の住まい」を体現する、スケルトンハウスらしい魅力のひとつではないでしょうか。
(※ZEH基準:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略。年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロになる住宅の性能基準。)
■設備・配線まわりで迷ったところ
スケルトンハウスならではの難しい部分のひとつが、配線まわりの納まりです。
天井や壁が石膏ボードで隠れる一般的な家とは違い、スケルトンハウスでは構造や仕上げがそのまま見えてくる場所が多いため、電気配線や設備のルート取りには細やかな工夫が求められます。
今回の現場でも、この点については施工会社の皆さんが非常に配慮してくださり、写真の通りとてもきれいな配線が実現しました。構造美を損なわずに、きちんと機能的な配線が収まっている。これは現場で一つ一つ確認しながら丁寧に進めてくださったおかげです。


また今回、浴室はユニットバスではなく造作浴室を採用しています。そのため、仕上げの前段階でFRP(繊維強化プラスチック)による防水層の施工が必要となりました。その様子がこちらの写真です。

造作浴室のメリットは、洗面室と浴室の仕上げを連続性のあるデザインにできる点。空間のつながりが生まれ、暮らしに豊かさが加わります。これからここにタイルが張られていく予定で、仕上がりが今からとても楽しみです。
■見えなくなるからこそ、丁寧に
断熱も配線も、完成すれば見えなくなってしまう場所です。だからこそ、そこに丁寧な仕事が詰まっていると、現場に立っていてつくづく感じました。
職人さんたちは「このあとの工程で見えなくなるからこそ、今きっちりやっておこう」という意識で、断熱材の納まり一つ、配線の整え方一つまで、とても誠実な仕事をしてくださいました。その積み重ねが、これから訪れる人が体感する“心地よさ”につながっていくのだと思います。
スケルトンハウスは「変えられる余白」を大切にする家ですが、その変えられない土台部分をしっかり整えることが、安心して暮らしを楽しむための前提になる。そのことを改めて実感した工程でした。
■次回予告
こうして見えない部分の工事が終わり、現場は次の大きなステップへと進みます。
次回はいよいよ、「空間が家らしくなる、内装仕上げの選択肢」について。スケルトンハウスならではの「少ないけれど迷う」素材選びの舞台裏を、またご紹介したいと思います。