リゾートホテルの建設ラッシュが続く沖縄の宮古島で取り組んでいる空き家活用プロジェクト「島民と共につくる、おばぁの宿」。大好きな島の人たちをハッピーにしたい。そんな思いで始めて5年が経とうとしています。ここでは、島民主体で運営する空き家活用の宿、島民と観光客とのつながりを生み出す“商店”、サトウキビより収益性の高いコーヒー豆栽培という未来計画の3本柱をお伝えします!

島の人との交流で芽生えた、地域への思い

こんにちは。「島民と共につくる、おばぁの宿」のプロジェクトリーダーをしている永野健太です。初回の記事となる今回は、宮城で不動産会社を経営する僕が、事業者としてではなく純粋に島民のためになることをしたいという思いに至った理由、そして計画の3つの柱についてお伝えします。

宮古島との縁は、離島をつなぐ伊良部大橋の開通と空港の整備でより注目度が増している2017年に不動産事業に誘われて島を訪れたのが始まりでした。そのときに出会ったのが嘉手納 学さんです。嘉手納さんは、伊良部島出身で現在は沖縄本島で不動産屋会社を経営されており、仕事を一緒にさせていただく中で島の方をたくさん紹介いただき、夜な夜なお酒を飲み交わす、なんてこともありました。

この物件を紹介してくれた嘉手納 学(かでな まなぶ)さん。“宮古島のお父さん”のような存在です

すると、この島の良い面だけでなくリアルな部分も耳にするようになっていきました。ホテルがたくさん建って観光客が増えたという明るいニュースが取り上げられている一方で、島の人たちにお金が落ちることはそれほど多くなく、生活は大して変わっていないこと(詳しくはファンドページをご覧ください)。慣れ親しんだ自然がなくなっていき、今まで自分たちが大好きだった島の姿が変わってしまうのではないかという不安が募っているという話をお聞きしました。

宮古島といえば、きれいな海や星、豊かな自然が取り上げられますが、僕が一番魅力的だと感じるのは「人」です。島の人たちは島への愛情がめちゃくちゃ強い。島をよくしたいと語る人に毎日のように出会いました。こうした交流を続けていくにつれ、僕はただリゾート地で儲ける不動産事業をするのではなく、島を思う熱い気持ちを持続可能なかたちにしたい。みんなで潤い、みんなで豊かになっていける未来を一緒につくるお手伝いをしたいと思い直すようになり、新しい取り組み(ここでは全体計画といいます)を始めることにしました。

遊休地を使った、つながりを生み出す、商店

宮古列島の島のひとつ、伊良部島で運営しているカフェ「國仲商店」。約2,000坪の庭があり、豊かな自然を満喫できます

全体計画は三つの柱で進めています。一つ目は2021年夏にオープンした「國仲商店」。伊良部島の国仲という集落にある約2,000坪の敷地をお借りして、飲食と物販を掛け合わせたお店を始めました。

当初の計画ではグランピング施設や宿泊施設といった案もありましたが、島の人たちの多くが「ここは風も抜けるしとても気持ちいい場所だよ〜」と嬉しそうに話している言葉を聞いて計画を変更。宿泊者という限られた人達だけのために利用される場所ではなく、島の人たちにも日常的に使っていただきながら、外から来た人たちにもこの島の気持ち良さを存分に感じてもらえる場所をつくりたいと思いました。先日、テラス席のみだったカフェ席を店内にも増設。お友達とおしゃべりしたり、仕事仲間と話し合ったり、一人でまったりしたり、リモートワークをしたりと、より自由に利用いただけるようになりました。

もちろん商店運営にとどまらず、いろいろな仕掛けをしていきたいなと思っています。例えば、フリーマーケットやマルシェといった新しいチャレンジのきっかけとなり、島の人たちの豊かさにつながっていくプロジェクトの起点となる場所にしたいです。

空き家を活用した、島民の収益になる“宿”


宮古島市平良にある築52年の小さな平屋をリノベーションした一棟貸しの宿「yomo 平良おばぁの宿」。空き家をリノベーションし、コミュニティの拠点にもなる宿をつくっていきます

二つ目は、空き家をリノベーションした宿泊施設づくりです。この島も例にもれず空き家は増え続けています。リゾートホテルが建設されて賃貸物件の家賃は値上がりする一方で、市街地では空き家が増えていることに違和感を覚えました。

そこでまずは僕らがいくつかの空き家をリノベーションして民泊を手掛け、成功事例をつくっていきます。この宿では、観光客との島民との出会い・つながりが生まれる仕掛けを提供していきます。たとえば今回のハロリノプロジェクトの宿yomoでは「島のおばぁと買い物に行って一緒に料理をつくって食べる“おばぁの手料理体験”」を考えました。観光客が「島の日常」に寄り添うキッカケをつくることで、島民との間の溝がなくなり、持続可能な観光地に近づいていくと考えています。

こうした空き家再生事例がモデルケースとなって、観光客の方に「行きたい!」と思っていただけるような宿泊施設をつくることができたら、ゆくゆくは島の人たち自身が所有する空き家を宿泊施設として活用し、おもてなしのサービスもあわせて提供できるようになり、安定した収入を生み出す流れができていくのです。

目指すは一大産業。コーヒー豆を伊良部島で栽培

東京農業大学亜熱帯農場のみなさん。地元農家の収入増を一つの目的としてコーヒー豆栽培に共同で取り組んでいます

三つ目はコーヒー豆栽培の挑戦です。なぜコーヒー豆なのか。宮古島に来たことのある人はたくさんのサトウキビ畑を目にしたことがあると思います。でもサトウキビの生産はそれほど多くの収益をもたらしていないということを島の人からお聞きしました。これを聞いたときはとても衝撃的でした。

農家さんたちの力で、島を潤す産業をつくれるものは何だろうか。みんなで考えて行き着いたのが「コーヒー豆」でした。日本は100%に近い量を輸入豆に頼っていますが、温暖化が進んでおり、じつは沖縄でも栽培できるのです。すでに県内で栽培にチャレンジしている人もいますが、コーヒーはサトウキビの2、3倍の収益を見込める可能性があります。

そこで、島の人たちと一緒に世界の名だたるコーヒー産地の中でも生産者の収入が圧倒的に高いハワイに視察に行ってきました。そこで分かったのは、生産するだけでなくコーヒー豆と観光を結びつけることが大きな要因のひとつである点。こうした事実から、宮古島が持っているポテンシャルや観光地としての今後の可能性にコーヒーという農業をかけ合わせると、ものすごくおもしろいことができるのではないかと島の人たちと話し、2021年から伊良部島の畑で栽培を始めることになったのです。

順調にすくすくと育っている苗を地元の人たちに提供していきながら、この島を「コーヒーと言ったら伊良部島」といわれる島にしていきたいと思っています。地元の農家さんや兼業農家さんの収入がアップしていき、地元の人たち自身が観光客に地元の魅力を伝えていける。そんなコーヒーをつくっていければと思っています。

僕らは「島の人と外部から来る人が、良い交流を図り、一緒に力を合わせて素敵な島の未来を作っていくこと」をテーマに掲げ全体計画に取り組んでいます。不動産会社と商店、コーヒー豆栽培はかけ離れているような印象を受けられるかもしれませんが、僕はすべてがつながっていると思っています。それは、不動産会社の役割はその地域の不動産の価値を最大限に高めていくことも仕事だと考えるからです。ひとつのホテルやひとつの物件にこだわるのではなく、島という広いくくりでとらえ、この島の価値を最大限に高めていける事業をこれからもつくっていきたいと思っています。

宿の情報はこちら
website https://yomo.y-yado.jp
Instagram @yomo_hirara

國仲商店の情報はこちら
Instagram @kuninaka_shoten